【学生→会社員・起業】もっと自分らしく楽しい人生を|小泉翔

旅好きな方なら「TABIPPO」という会社を知っている方も多いのではないでしょうか。
今回は「TABIPPO」創業者のひとりでもある小泉翔さんに世界一周後のお話をお伺いしました。

”若者が旅する文化を創りたい”

旅を終えてから、ブレずにまっすぐ想いを貫く小泉さんの生き方は、熱く惹かれるものを感じます。小泉さんの人生をガラッと変えた旅について、じっくりお話をお聞きしました。

小泉翔さん
TABIPPOの名付け親、創設メンバー。3歳からサッカーを始め、高校時代は大宮アルディージャU-18に所属。 立教大学在学中に休学しアメリカに留学後、そのまま世界一周の旅へ出発。旅の初日にバックパックを紛失し、 リュックサックで20ヶ国を巡り各国で出会った仲間と帰国後にTABIPPOを設立。新卒で大手Web広告代理店に就職。 退職後14年4月にTABIPPOを法人化。株式会社TABIPPO:http://inc.tabippo.net/

 

深夜特急に乗り込んでみたら、世界一周が待っていた

ー本日はよろしくお願いします!小泉さんは旅をきっかけに、人生がかなり変わったのでは?と思うのですが、はじめて「旅に出よう!」と興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか。

小泉翔さん(以下:小泉):きっかけは、大学一年のときに友人に薦められて読んだ、沢木耕太郎の『深夜特急』なんです。帯に書いてあった“トルコの終身刑を受けた受刑者たちは、牢屋から脱獄することを深夜特急に乗り込むという”みたいな文章がめちゃくちゃ衝撃的で…!

ーそれで、深夜特急に乗り込んじゃおうと…?

小泉:はい(笑)。それまでの人生はサッカーのプロ選手を目指して、高校ではJリーグのユースをやっていたくらいサッカー一筋でした。怪我をきっかけに、プロになることを諦めてからは、将来の夢もなくなり、このまま就職するのか…と悩んでいたんです。そんなときにこの『深夜特急』に出会い、これはもう乗りこむしかないな…と(笑)!

そのあとすぐに『深夜特急』を紹介してれた友人と10日間タイに行ったんです。これが、はじめてのバックパッカースタイルの旅だったのですが、とにかく楽しくて、衝撃の連続で。この旅をきっかけに、もっと海外に行こう!と決め、大学3年のときに休学をしたんです。

ー休学して世界一周へ…!?

小泉:いや、まずは英語を勉強しようと、アメリカへ交換留学に行ったんです。留学先が田舎の方だったので、せっかくならニューヨークや西海岸にも行きたいなぁ…と思って、ある日"世界地図"を買ったんですよね。

そしたら、「あれ?ここから南米近いんじゃない?南米まで行ったらアフリカも近い…!ひょっとして世界一周できるんじゃない!?」ってもうワクワクが止まらなくなっちゃって(笑)。留学が終わったら、残りの休学期間で旅をしよう!と決めたんです。

 

「もっと好きに生きていい」ということに気づかせてくれた旅

ー留学先で急遽、世界一周に行くことを決めたんですね。実際に世界一周に行ってみてどうでしたか?

小泉:初日に、バックパックが無くなるハプニングに見舞われましたが(笑)、その他は、王道のルートを駆け足でいくような旅でしたね。ただ、ずっとひとつのことを考えていて…。

ーひとつのこと…?

小泉:“日本ってすごくいい国なのにもったいない”ってことをずっと考えながら旅をしていたんです。日本ってどの国よりもサービスの質もクオリティも圧倒的に優れているのに、インフラもサービスも整っていない貧しい国の人たちの方が、みんな明るくてオープンで、すごく楽しそうに生きていたんです。このギャップに疑問を感じていて…。

帰国したら俺が日本を変えてやる!って熱く考えていました。今思うと中二病みたいなものかもしれませんが(笑)。

ーたしかに、そのギャップは私も感じることが多かったです。(日本を変えたいとは思わなかったですけど…。)
そこからTABIPPOのアイデアが生まれたということなんでしょうか…?

小泉:そうですね。もっと好きに生きていんだ!とか、もっと日本でも楽しく生活しよう!ってことに気がつけたのは、自分が旅をしたからだと思ったんです。だからシンプルに旅をする人を増やせば日本はもっと素敵な国になるはずだ!って答えが出たんです。

小泉:きっかけは人それぞれでも”楽しい人生を送ろう!”って思う人が増えることで、少しずつ日本を変えられるんじゃないか?と思っていました。帰国後は本気で、”世界一周のムーブメントを起こそう!”と思いながら旅をしていましたね。

 

旅する人が増えれば日本をもっと素敵な国に変えることができる

ー旅をしているときから旅後にやりたいことはイメージできていたということなんでしょうか…?

小泉:そうですね。旅の途中から若者が旅に行くにはどうしたらいいか?ってことを考えていましたね。帰国した翌週(2010年の3月)にはTABIPPOのアイデアの実現に向けて動きはじめました。

まずは、イベントをしよう!と旅先で出会った同年代の仲間と一緒に小規模な世界一周イベントを企画しました。そのときのメンバーには、現在の株式会社TABIPPOの代表である清水や創業メンバーの前田もいましたね。

ー行動が早い…!初めてのイベントはどうでしたか?

小泉:メンバーの多くが世界一周中にブログを書いていたこともあって、「世界一周中に出会った仲間とイベントやります」とブログで告知をしたら、50人くらい集まったんです。そのイベントが自信となり、その翌月には、100人くらいのイベントをやって…。

このように毎月イベントをしたり、世界一周の費用や航空券、宿の取り方などのノウハウを情報発信したり、できることを進めていましたね。

ー想いをすぐに行動に変えられるそのエネルギーってすごいと思います。それに、ちゃんと維持できているのがまたすごい…!

小泉:本当にシンプルに、”旅する人が増えれば日本を変えることができる”って信じていたんですよね。目の前のことをひとつひとつこなしていけば、絶対に変えられる!って自信があったんです。

小泉:ただ3、4ヶ月ほど、毎月イベントをしていたら、このままでは日本を変えられない!ってことに気がつき、もっとインパクトのある大規模なイベントをしよう!となったんです。そこで、2010年の夏には、世界中をダンスの旅で巡っていたEXILEのUSAさんをゲストにお呼びして、1,500人規模のイベントを行ったんです。これが、今でも続けているBackpackFESTAのはじまりです。

ー今も続いているんですね…!
でも、学生だけで1500人規模のイベントをやるって大変だったのでは…?

小泉:めっちゃ大変でした(笑)!でもきっと、仲間がいたのがよかったんだと思っています。それぞれ役割を決めて、ボランティアスタッフを募集したり、営業をしたり、はじめてのことだらけで苦労することもありましたが、それでもインパクトのあるものを作りたかったんです。

2011年には一緒にTABIPPOを運営していた一つ上の世代が就職をしたので、TABIPPOの代表をしていました。その翌年には、自分も大学卒業のタイミングで就職をしたんです。

ーそのときはTABIPPOを法人にしようとは思っていなかったんでしょうか。

小泉:そのときは考えていなかったですね。いずれパソコン一台でどこでも仕事ができるようなスキルを身につけたかったので、まずはweb系の会社に就職しよう!と決めていたんです。その中でもwebの知識が一番得られそうなインターネットの広告代理店を受けて、某大手のWeb広告代理店に入社しました。ちょうど1年で辞めたんですけどね。

ー1年…!?辞めたきっかけはなんだったのでしょうか?

小泉:就職した後は、TABIPPOの運営を後輩たちに任せていたのですが、社会人一年目のときに後輩が主催したイベントに参加したんです。そのときのイベントに感動して、これを自分の仕事にしたい!と思ったのがきっかけです。

その想いを仲間に話したら、仕事にしたいというメンバー3人が集まって、みなで一斉に仕事を辞め、2014年にTABIPPOを法人化しましたね。

 

自分の背中を見てくれている人に楽しい生き方の提唱をしたい

ーみんなで仕事を辞めて起業ってすごい勇気…。不安はなかったんでしょうか。

小泉:起業する前にTABIPPOとして出版した本の売り上げが順調だったので、お金もなんとかなるだろうと。そのときはまだ24歳くらいだったこともあって、仮にうまくいかなくても転職できる年齢だし、会社で身につけたwebの知識もあったので、やってみよう!と。

会社を大きくして売却や上場したい!という思いではなく、純粋に自分たちの好きなことを仕事にしたい!って思っていました。とにかく世界一周のムーブメント起こそう!って想いは昔から今でも変わっていないですね。

ー今でもブレずに同じ想いで続けられるって素晴らしいです!

小泉:ほんとに…(笑)!たぶん、最初はお金を稼がずに熱い想いだけで3、4年やってたのが大きいかもしれないですね。

小泉:それに実は、TABIPPOを始めた頃から5~6年間、メンバーみんなが同じシェアハウスで一緒に住んでいたのも大きいと思いますね。お互いのことを理解しているし、だからこそ信頼関係が築けているような気がしています。

ーなるほど!だからみんな同じ方向を向いていられるのかもしれないですね。 1年間で会社を辞めたとこのことでしたが、一度会社に勤めてよかったと思うことはありますか?

小泉:今は主に、旅行系企業のPR営業を統括しているんですけど、1年間でしたがWeb広告の会社で働いた経験や知識がすごく活きていると思っています。むしろ、この経験がなかったらできていなかったような気もしているので、一度会社に勤めてよかったと思っていますね。

ー今はどのような働き方をされているのでしょうか。

小泉:TABIPPOは周りの関係者や社員に迷惑をかけなければ自由に働いていいっていうスタンスなので、好きなときに好きなだけ働いてます。仕事で移動することも多いので、いろいろな場所で働いていますね。

それに、社会人になってもこういう働き方ができる!という、楽しい生き方の提唱をしたいと思っているので、”面白い働き方してるしてるね!”って思われる働き方に挑戦していこうと意識していますね。

小泉:あえて平日の午前中にサッカーしたりとか(笑)!普通の社会人じゃなかなか休めない平日に、海外に行って羨ましがられることも実は大事なことだと思っているんです。

ー羨ましがられるかぁ。たしかに大事かもしれないですね!小泉さんのように旅に関わる仕事をしたい人や、帰国後に新しいことをはじめたい人に向けてアドバイスはありますか?

小泉:僕の場合は、仲間の存在とwebを学んだ経験が活きているので、なにから手をつけていいかわからない人はwebを勉強することから始めてもいいと思いますね。

ーそれでは最後に、今後やりたいことはありますか?

小泉:TABIPPOがもっと世間にインパクトを残せているという実感を感じてからになると思うのですが、いずれサッカーの仕事をしたいですね。個人的な目標としては、好きなことだけをして生きたいというのがあるので、旅とサッカーという軸はブラさずにそれを仕事にしたいと思っています。

ーTABIPPOとしてインパクトを残すとは…?

小泉:留学という言葉は誰もが知っていますよね。それと同じように世界一周の言葉自体の概念を広げて一般化し、当たり前の文化にしたいと思っています。
あとは、今までは「若者が旅する文化をつくる」という言葉を指標にしていたのですが、今後は具体的な数字を追いかけていきたいですね。例えば、現状20%のパスポート所持率を50%にするとか。

小泉:実はTABIPPOのメンバーは、長期に渡り世界中を旅している、いわゆる「旅人」の人たちに比べるとまだまだ旅の経験って少ないんです。でも、僕らが重視したいのは、旅の経験ではなく”生き方”なんですよね。旅を通じて、もっと自分らしく楽しい人生を送る人が増えたらいいなと思っているんです。

これからは長期の旅人も巻き込んで、若者が旅する文化、若者が旅するように働ける文化をつくるのがTABIPPOのゴールです。そのためにも、同じ旅系メディアや旅行業界の人たちとも仲間になって、発信力を増やしていきたいですね。僕は旅に出て、人生の全てが変わりました。

取材日 2017年8月19日
写真・編集 石川景規

石川妙子
1987年生まれ、東京都在住。大学卒業後、大手銀行に入社。4年3ヶ月で退職し自由大学の運営チームへ。2015年1月より世界一周に出る。現在、ウェブメディアの編集や取材をなりわいにしている。

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