【会社員→会社員・移住】日々の暮らしを大切に|かみむらなおと

大手物流企業を退職し、夫婦で1年半に及ぶ世界一周の旅へ。

“帰国後にやりたいことや興味のあることもあったけれど、今の気持ちを冷静に判断してみたら、もっと身近な「日々の暮らしを楽しむこと」を大事にしたいと思ったんだよね。”

そう笑顔で話すのは、今回をお話をお伺いしたかみむらなおとさん。

帰国後に選んだ道は、以前と同じ業界での会社員。新たに住む場所を変え、理想の暮らしをひとつひとつ作り上げているかみむらなおとさんに、世界一周を終えてからの話を聞いてきました。

かみむらなおと:
1986年生まれ、神奈川県在住。大手物流企業を退職し、2014年8月から2016年7月まで夫婦で世界一周の旅へ。気になるところへ思いのままに飛び回り、旅した国は70カ国を超える。帰国した今は再び会社員へ戻り、湘南の端っこ二宮町に移住。日々の暮らしを楽しもうと模索中。

 

日々膨らむ旅への想い。大手企業を退職し、夫婦で世界一周へ

ーまずは、旅に出るまでのお話をお伺いしたいのですが、どんなことをされていたのでしょう。

なおと:僕はもともと物流業界でサラリーマンをしていたんです。わりと大きい会社で、お給料も良くて、何の不満もない生活を送っていたんだけど、旅にはずっと行きたい想いがあったんです。

21歳のときに初めて海外(カンボジア)に行ったときの経験が僕にとっては本当に衝撃的で…。そのときから、海外を意識するようになりましたね。

カンボジアって空港から出ると、その…いきなり「カンボジア」って感じで(笑)。道端に屋台が並んでいたり、バイクに3人乗りしていたり、アジアの雑多な感じが、刺激的で好奇心がくすぐられるというか、心地良くてずっと心に残っていたんです。

ーそれで世界一周に行きたいと思い始めたんですね。

なおと:それから、旅への想いが膨らんでいきましたね。就職活動中に、世界一周をしているバックパッカーの存在を知って、漠然と「世界一周に行ってみたいなぁ」「あの刺激をもっと感じたいなぁ」と、思っていました。でもそのときは、「今はできない…」って思っていてやめちゃったんですけど。

ーなぜ旅ではなく、就職の道を?

なおと:当時は、バックパッカーの旅をしたこともなかったし、英語も話せない、今の自分にはできないと思って…。旅を崇高なものだと思い込んでいたんでしょうね。

社会人経験を積んでから、本当に行きたくなったときに行こうと思って、そのまま就職しました。だけど、やっぱり、社会人3年目くらいから行きたい気持ちが湧いてきて、準備や気持ちの整理をし始めましたね。

ー海外への思いが膨らんだのは、何かきっかけがあったのですか?

なおと:妻と出会ったことが大きいですね。妻は元々ネパール好きが高じて、ネパールのチャイや料理を扱ってるカフェを経営していたんですが、僕はよくそこに遊びに行っていたんです。実は妻も世界一周に行こうとしたことがあったんですけど、途中でネパールにハマっちゃって、他の国に行くのをやめちゃったみたいです(笑)。

そんな話を結婚前によくしていたんですよね。僕も、世界一周に行きたいことを伝えたら、「一緒に行こう!」と言ってくれて、行きたい想いが固まりましたね。それから、結婚して準備を始めて、入籍してから1年くらいで出発しました。

ー大手の企業を辞めることに抵抗はなかったですか?

なおと:いやぁ、そりゃありましたよ(笑)。入社6年目で仕事もちょうど面白くなってきた時期だったし、帰ってきてからどうするか、仕事があるのか、はたして本当にこの仕事を辞めてよいのかなど、気がかりなことはたくさんありましたね。

ただ、やっぱりあのとき、旅に出ればよかったっていう、後悔だけはしたくなかったんです。それくらい世界中を見ることが、 本当に自分がやってみたいことでしたね。

それに、妻と行くことが決まったとき、もし自分たちの子どもができたら旅の話をできたらいいな、なんて思ったり…。”今行くことに価値があるから行こう!”って思えたタイミングだったんです。

 

心に耳を傾け、本当に行きたいと思う場所へ

ーでは実際に旅に出た時のお話を聞かせてください。どんな旅をしていたのでしょうか?

なおと:とにかく行きたいところに行く!旅ですね。本当に、興味があるところに行って、あれがしたい、これが見たい、これが食べたいとか、お互いの気持ちや感覚を大切にしていました

時間が足りず一度はアフリカ行きを諦めたのですが、僕は帰ってきてから1人でアフリカに行ったんです(笑)。 それくらい本心で行きたいところに行っていましたね。

ー夫婦で行きたいところに行く!って理想ですよね。旅に行く前と行った後でなにか変化はありましたか?

なおと:人生が変わった!みたいな大きな変化はなかったですね。「旅に出ると価値観が変わる」みたいな話はよく聞くけど、それが旅の価値のすべてではないし、一面に過ぎないと思っています。もちろん細かいところを言えばたくさん変化はあるんですけどね。例えば、世界中に友達ができたとか、語学がほんの少し上達したとか、顔を洗うのに洗顔フォームなんていらない、石鹸で十分!とか(笑)。

それに、変わることを求めて旅に出たのではなくて、単純に、世界中に行きたかったんですよね。世界を旅することが自分の人生でどうしてもやりたいことだったんです。毎日わくわくしたり、考えたり、刺激に溢れていて、それが心地良くてね。旅に出たことは、何も後悔していないし、本当に行ってよかったと思っていますね。

 

「日々の暮らしを楽しみたい」もう一度、サラリーマンをするという選択

ー帰国後について聞かせてください。帰国してから、今は何をしているんですか?

なおと:帰国して半年後に就職先が決まって、旅に出る前と同じ物流業界で働き始めました。

ー同じ業界にしたのですね。他の業界や仕事には惹かれなかったですか?

なおと:いや〜ありますよ!違う業界で働くことも、昔からお店やゲストハウスのようなコミュニティや場所づくりをしたいなぁと思っていたので、起業を考えたこともありますね。

でも興味はあるんだけど、帰ってきたら燃え尽き症候群みたいになっちゃって(笑)。僕にとって旅が本当にやりたいことだったから燃え尽きちゃって、何か新しいことを始めるエネルギーが全然なくなってしまったんです。

色々やってみたいことはあるんだけど、どれもエネルギーを注ぐまでにしっくりこない、そもそもそこに注ぐエネルギーがない、どれをはじめたらいいのか自分でわからない…そのときの僕にはこれをやろう!って、決められなかったんですよね。

なおと

それに、帰ってきてから何もしないでお金が減っていく焦りや不安、今後の家族のことを考えたときに、ずっと何もしていない状態よりも、まず今は働こうって思えたんですよね。何がしたいかはっきりしない段階なら、無理やり決めることじゃないかなって思えて、前の仕事も好きでしたし、まずはまた会社で働こうと思えたんです。働きながら、次のステップを探そうとしています。

ーそういえば帰国してから、神奈川県の二宮町に移住されていましたよね?

なおと:そうですね。もともと妻が自然の身近な場所に住みたい希望があって、帰国してから湘南の端の二宮町に引っ越したんですよ。今は、町に住んでいる人たちと一緒に空家をセルフリノベーションして新しい空間をつくったり、町づくりのようなことをしています。

みんなでセルフリノベしてできた場所は、ポップアップキッチンやレンタルスペースとして使える空間になったのですが、そこを月に一週間だけ借りて、旅に出る前に妻が営んでいたチャイのお店を復活させました。僕も週末だけお手伝いしているんです。

なおと:タイミングよくこの町にも面白い人(起業家、カフェ経営者、写真家、画家など)、魅力的な人がたくさん集まってきていて、自分たちが住んでいる町を盛り上げようと町の人たちがいろいろと仕掛け始めた時期に引っ越してこれたので毎日楽しいですね。

二宮町は海もあり山もあり、自然が豊かで人も穏やか、暮らしていてとても気持ちが良いです。僕は引っ越すことに、ちょっと抵抗があったんだけど、実際に動いて経験してみると考え方も変わりますね。 自然が豊かな土地でのんびり暮らそうと思っていたのですが、こういった町づくりのようなことに関わることができて、動いたことで結果的に別の形でも暮らしを楽しむことができています。これは嬉しい誤算でした。

もしこれから移住を考えている人がいるのであれば、コミュニティができあがったところよりも、これから面白くなりそう!と感じられる伸びしろのあるエリアがいいと思います。そういった土地は外からの人間が入り込む余地や、移住者を受け入れようとしてくれる姿勢があって、移住者が必要とされているんです。地域を面白くしようとする動きがあって、そこに関わっていければその地域やコミュニティへの当事者意識が強くなってより楽しい暮らしが送れると思います。

ーなるほど、いろいろと動いていますね!次のステップということでしたが、次に何かやりたいことがあるんでしょうか。

なおと:模索中ですが、いつか「自分の場所」みたいなものを作りたいなと漠然と思っています。

自分や周りの人の想いを表現できる場所を作りたいなって。これといった明確な理由はないんですが、”お店”を持ちたいって昔から思っているんです。バイト時代に書いた夢に、「世界一周」「幸せな家庭」「自分の店を持つ」「自給自足」って書いたことがあって、当時は適当に書いたんだけど(笑)、この夢が心のどこかにずっと残っていて、きっとこれが本当にやりたいことなのかなって思っているんです。

それに加えて旅から帰ってきて、世界中飛び回っていた反動か(笑)、次は『日々の暮らしを楽しんでいきたい』って強く思うようになりました。世界中で本当に多様な暮らしの姿に触れてきて、家があって、ごはんを美味しく食べられて、家族や仲間と笑いあい、一見何でもないような毎日を過ごす。改めてそれってすごく幸せなことだなと感じましたね。

『日々の暮らしを楽しむ』ことを大切に考えると、やっぱり金銭面・経済面で考えなきゃいけないこともあると思っているんです。自分だけのことを考えるのは違うなって思いましたね。

ーそれは、自分のやりたいことより、家族を優先したってことなんでしょうか。

なおと:そうは思っていないんですよ。今の自分が一番やりたいことが「家族と楽しく暮らしたい」だったんですよね。その気持ちが大きかったので、今は再就職することが、一番良い判断かなと思ったんです。

自分がやりたいこと、生活、経済面、家族のことをいろいろ考えて、「経済面で安定するために、今は働こう!」と思ったんですよね。なので、前職のキャリアを引き継いで仕事ができる環境、同じ業界への再就職を選びましたね。

その上で次のステップとしては、「幸せな家庭を築き、暮らしを楽しむ」かな。 今は二宮町で木々に囲まれた庭付きの平屋に住んでいて、自然を感じながら日々穏やかに過ごしています。畑で野菜をつくったり、海で釣りをしたり、町のみんなと過ごしたり、まあ、宅飲みが多いですね(笑)。休日はほぼ二宮町で妻と過ごして暮らしを楽しんでいます。

なおと

ーいいですね!お金のことって、みんな考えてると思うんですけど、そのような感情ってなかなか出さない人も多いですよね。素晴らしい決断だと思います!

それでは、最後になりますが、今回この「Traveled,」に参加しようと思った理由を聞かせてください。

なおと:仕事を辞めて、長期で旅に出た経験を何らかの形で発信したかったからですね。自分の経験したものを、外に出すことによって、人もモノも自分も、もっと広がりが出ると思っているんです。今はこれがやりたい!って決められない状態だからこそ、いろいろ挑戦してもがいていたいなって思いもあります。あとは、今このメディアをやろうって集まっているメンバーと、考えていることが近いというか、このメンバーと一緒にできたら面白いだろうなって思っています。

Sato
1988年生まれ、関西在住。2015年6月から、世界一周の旅へ。2016年10月帰国。次のステップへ向け準備中。

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